熱かったり冷たかったり

当初から予想されていたことだが、ヱヴァ新劇場版の評価の温度差が激しくて笑えた。

・テレビと全然一緒じゃん!(悪い意味で)
・テレビと全然違うじゃん!(いい意味で)

・初心者には分かりにくい!(初心者意識で)
・初心者には分からなくていい!(ベテラン意識で)

個々の意見については適当に探してもらいたいが、一度不特定多数共有された表現は見解を統一されるべきでないので、全ての意見は等しく価値がある。
大事なのは声の多さだ。



さて、オンタイムでハマってない方の意見としては、zoot32氏のコメントが実に含蓄深い。


「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」を見たゼ! - 空中キャンプ

ミサトの「今の男は自分にしか興味がないから、女にはつらい時代ね」というせりふは、九〇年代ではきっとでてこないだろうなー、とおもうし、ミサトとシンジが手をつなぐ場面など見ていると、やっぱりぐっときてしまう。今のふたりなら、すっと手をつなぐことができるんだな、とおもった。九〇年代では、作品として、このふたりがまだ手をつなぐことができなかった。そういう距離感がどうしてもあった。でも今ならできる。時代を呼吸して、それを作品にフィードバックさせるという作業を、庵野はおこなっているのだなとおもう。ただし、「序」においては、ほんのさわりていどにとどまっているし、今の時点では判断ができない。



そして全面肯定派の意見としては、奈須きのこ氏のコメントに集約されるだろうと思う。
やっぱり経験というか蓄積の差なんだろーな、エヴァという物語に足許をすくわれた事実の。


むしろ若返った。(きのこ)- 竹箒日記

約二時間、完全に燃え上がった。
日陰者(オタク)で良かったとニヤついた。
これだけのご馳走を、二度も、しかも最高の状態で楽しめる年代で良かったと吠えあげた。

愛憎いりまじり、かつての熱も今の醜態も知っているからこその喜び。
スタッフロールの後、あれだけ消費つくされたものを完膚無きまでに復元し超越したこの奇跡。
スタッフの十年間がどれほどのものだったか思い知らされ、“この十年、何も成長していない”と自らの手を睨みつけた戦慄を、きっと多くの人間が味わう事になる。

ようするに、俺たちはまたこの化け物に振り回されるのだ。
これを幸福と言わずなんと言おう。
これだけは若い子には経験しようのない、リアルエヴァ世代のご褒美だぜ?


奈須氏の言にある“この十年、何も成長していない”という言葉は自分にとっても大きく響く。


正直、あの頃は自分が変われるのではないかと感じていた。
変わらなきゃならないとも感じていた。
でも十年たった今、自分は何も変わっていない。
あの時何も乗り越えられなかった自分に、何かを変える力があろうはずもないから。


でも、今ここにチャンスめいたものが現れた。
それは或いはまやかしかもしれない。
もう一度手酷く裏切られるかもしれない。深く傷つくかもしれない。
でもあの時の痛みが何物にも変えがたい経験だったことは忘れようが無い。
僕らはもう一度手酷く裏切られ直したいし、もう一度深く傷つき直したいのだ。


そうすることでこの十年に区切りをつけたいから。
「逃げちゃダメだ」と自分に言えなかったこの十年の。


PS.
今回は下手をすると前よりも傷つきそうな気がする。
それに、傷つくことを楽しめる年齢の自分がいる。