男は黙って列に並べ

最寄りのTSUTAYAが金曜から旧作1枚95円でレンタルしている。
ワタシも金〜土曜にかけて22枚のCDを借り倒した。
サービス期間は月曜までなので今朝も雨を突いてTSUTAYAに出向いた。


さすがに95円だとレンタル客の入りが多く、カウンターに列をなして長々と待っていると、返却に来たのか青いレンタル袋を持った50がらみのオッサンが店に入ってきた。
オッサンはカウンターの周りをあちこち見回しながら列に並びもせずしばらく佇んでいた。


オッサンは不意に「CLOSED」の札の立ったカウンターの前に立ち、何ぞ事務仕事をやってる最中の店員に話しかけた。
距離が離れていたので音声は殆ど聞こえなかったが、
店員が手のひらを出して列の後ろの方を指しながら喋っていたところを見ると
「とりあえず列の後ろに並んでくれ」と言っていた模様。


しかしオッサンは顔色を険しくし、何やら文句を滔滔と垂れ始めた(かのような映像だった)。
おそらくは「どうせオレ一人だから空いてるレジカウンターでチャチャッと済ませろ」などと並んでる連中の立場がない発言をしていたのだろう。
その後もオッサンは自分の意見を曲げずに頑張り続け、その間にワタシはCDを借り終え、ゆっくりと書籍を数点選んで再びレジに並んでいた。


本を買い終えたときには、オッサンはまだレンタルの青い袋を持ってウロウロしていた。
結局返せてないのか。
最初から大人しく列に並んでおればとっくに済んだ用なのだが。


そのオッサンがこれまでどのような人生を送ってきたのか知らない。
ワタシに見えないオッサンの人生は苦労と努力に満ち溢れているのかもしれない。
出るところに出れば、尊敬に値する人物かもしれない。
しかしワタシの目に写るのは、ビデオの返却も出来ないちっぽけなオッサンに過ぎない。
こんな不器用な生き方しかできない人間(たかだかビデオでここまで話を広げるのも何だ)が、周囲との軋轢を作らずにこの先生きていけるのだろうかと心配になってきた。


自分を主張してビデオも返せないぐらいなら、ワタシは自分なんぞ要らない。


結局今日は25枚借りた。